星降る宙のダンデリオン ABOUT

星降る宙のダンデリオンについて

星降る宙のダンデリオンの始まり
星降る宙のダンデリオン、そもそもの構想は2008年にUGSFのアニメを制作する為のデモリールとセットで同時執筆を開始したSS「スターライト・エンゲージ」にまで遡ります。
この時点で、地球人のカケル・ルナーサ・ダヴェンポートとボスコニアンのジョディ・ライマーという二人の主人公は設定されており、シナリオの核となる点は地球人とボスコニアンの異文化コミュニケーションをモチーフにしていました。

当時、私は仕事でプロジェクトマネージャーとして日本人と外国人双方を束ねたチームを率いていました。
そこで、私は同じ人間でありながらも文化も価値観も異なる外国の方々とのコミュニケーションを通して、異なる価値観の持ち主同士がどのように良好な関係を構築するか勉強する機会を得ました。

そんな時、私は思いました。
銀河系の様々な異星人種の集合体である銀河連邦では、価値観や文化の壁をどのように克服し、連帯を図ったのかという疑問です。
同じ地球人同士でもその壁を乗り越えるのは大変な事ですが、これが異星人だとしたら?
そこには様々なドラマが産まれるだろうと考え、私は執筆を始めました。
このテーマは今回お送りする「星降る宙のダンデリオン」と共通の大きなテーマです。
しかし、当時の「スターライト・エンゲージ」と「星降る宙のダンデリオン」には大きな違いがありました。
「スターライト・エンゲージ」ではカケルとボスコニアンのジョディ、そして地球人のヒロインの三角関係を描くライトなハーレムコメディだったのに対して「星降る宙のダンデリオン」では地球人と純血のボスコニアン、地球人との混血ボスコニアン、3つの人種を巡るシリアスなヒューマンドラマになっている事です。

「星降る宙のダンデリオン」に至るまで
「星降る宙のダンデリオン」に至るまでの間、幾度もストーリーのブラッシュアップを重ねる過程で私自身も現実世界で様々な経験をしました。
友人から実はLGBTQ/T(トランスジェンダー)である事を告げられた事、そして自分自身もLGBTQ/B(全性愛者)である事を自覚しカミングアウトした事、そして、子供の頃から自分のパーソナリティやパフォーマンスが他人に比べて大きく異なってる事の原因が先天性の脳障害……
ADHD・ASD・ADD・ディスレクシアを負っていた事が原因であると主治医から告げられた事、やがて、新しく出来た友人達のうち何人かもまたこうしたASD当事者やLGBTQ当事者であった事。
それをとりまく社会の変容をリアルタイムで体験していくにつれ、異なる特性を持つ者同士が相互理解し、信頼関係を築くには社会はどうあるべきか、個人はどうあるべきか、真剣に考えさせられました。
こうした体験を経て「星降る宙のダンデリオン」は地球人と異星人がどのように共存共栄していけるのか、そこに友情はあるのか、恋はあるのか、愛はあるのか、どのような葛藤があってどう解決していくのかというシリアスな内容の話へと変貌していきました。

「星降る宙のダンデリオン」と言う物語とは
UGSFシリーズにおいて、銀河連邦は多種多様な種族と国家と価値観が共存・共栄する連合体として描かれておりますが現実世界においても多様な存在と価値観の尊重や配慮を訴える声が上がり始めています。
多様性の尊重と言えば、一見美しい事ですし、それは理想的な事でしょう。
しかし、その一方でその言葉が独り歩きし、いつのまにか一部の存在への利益誘導の方便に使われたりする事もあれば、時としては「過剰な配慮」を憂慮する声も聞こえてきます。
先に述べた通り、私自身もASD・ADHD・ADD・ディスレクシアと言った重度の先天性障害の当事者であると共に、パンセクシャルという背景を抱えてます、
そうした立場から世界を見ると、まだ世界はマイノリティを受け入れる充分な体制が整っているとは思えません。
一方、当事者でない人達から見ると、今行われているマイノリティへの配慮も「過剰な配慮がすぎる」と感じられるそうです。
どこまでが適切な配慮と共存なのか、どこまでが過剰な配慮なのか、その答えを人類が見つけるまでにはもう少し時間がかかるでしょうし、そうした永遠の問いかけはこの作品世界でも形を変えて描かれております。
地球人が地球人以外の人種とどのように共存・共栄・配慮を両立させていくのか?
それは文字通り苦難の道でしょう。
このテーマを作品に盛り込んだのは、昨今の民族や国家の対立、人種問題などを見るにつけ、数多くの異星人を抱える遠未来の銀河連邦ならどう解決するのかと私なりに思案を巡らせた結果です。

――本作を製作するにあたり、周りの友人や2DCGグラフィッカー、3DCGグラフィッカーの皆様に多大なお力添えを頂きました。
この場を借りてお礼申し上げます。
どうぞ星降る宙のダンデリオン、お楽しみ下さいませ。

UGSF.ORG代表 StorchP