ドークト・ウォー
ドークトの起源とその力
銀河連邦が成立して以来、人間の脳が持つDホールから高次元のエネルギーを抽出し、その力を行使する能力、すなわちドークトの研究は盛んに行われていた。古くからこの力は魔法、ESP、ニュータイプ、リークパワーなど様々な呼び方をされ、その能力にも多様なバリエーションが存在していた。
しかし、その根源はすべて人間のDホールからのエネルギー抽出に帰結する。
地球人を起源とする銀河連邦の人々の持つドークトは「弱いドークト」であり、感が良い程度の能力が一般的であった。戦略レベルで寄与する「強いドークト」を持つ者は極めて稀であり、その希少性が銀河連邦にとって大きな課題となっていた。
ドークト・ウォーとは2990年代にこの「強いドークト」を巡って発生した紛争を指す。
このドークト・ウォーには謎が多い。
紛争が終結した2998年から更に10年後、銀河連邦を始めとするドークト・ウォーに関わった組織による情報が開示され、多くのジャーナリストがその情報をこぞってかき集め、更には出所不明の情報にまで手を出す者もいた。
そこまで彼らをかきたてたのには理由がある。
ドークト・ウォーに関わった民間軍事会社、美城プロダクションの資料に書き記された「30000人の友達計画」
と言う謎のキーワード。
ジャーナリスト達はこぞって美城プロダクションの関係者に「これは何なのか」と問いただしたが、誰一人として頑なに口にしなかった。
美城プロダクションのアイドルパイロッツ達を統括する美城常務。
彼女は記者たちによる「30000人の友達計画」について語る事は遂に無かった。
デストロン軍団の襲来
この紛争の始まりは2995年、セイバートロン星の反乱分子であるデストロンのリーダー、スーパーメガトロンがデストロン軍団を率いて銀河連邦太陽系管区の地球を襲撃した事にある。
彼の目的は、人間の脳のDホールからドークトを抽出し、エネルギーをエネルゴンキューブに変換することであった。
エネルゴンキューブとはセイバートロン星の技術で、あらゆるエネルギー原料から純粋なエネルギーの結晶体を生成するものである。
電力から化石燃料まであらゆるものが原料となりえるが、人間のドークトが最も変換効率が高いことが判明し、デストロン軍団は地球人のドークトを狙っていた。
人間のドークトが有意なエネルギー源である事はセイバートロン星では以前から知られていた。
ドークト能力の高い人間のドークトをセイバートロン星の住民……トランスフォーマーのボディであるトランステクターで稼働させれば極めて高いパフォーマンスを発揮する事が判明しており、セイバートロン星ではゴッドマスターと呼ばれる技術で人間がトランステクターと融合し、稼働させる技術が確立され、事実、デストロン軍団は2990年にギガ、メガ、ハイドラ―、バスターといった地球人にトランステクターを与え、地球攻略を企図した事もあった。
セイバートロン星の主勢力サイバトロンもゴッドマスターのジンライを中心に戦力を地球に集結させ、彼らを撃退したが、その戦闘は熾烈を極め、銀河連邦の軍部を大いに驚愕させていた経緯もあるが、スーパーメガトロンの襲来はさらに大規模な物であり、銀河連邦を大いに震撼させた。
事実、デストロンは銀河連邦法で定める宇宙規模災害に指定されており、UIMSやギャラガ、バクテリアン等と同等の脅威であった。
先のエルドラン協定に関わる法律が再び発動し、矢島オフィス第6軍の七瀬留美はエルラインを駆り、戦いに参加するレベルだったのである。
矢島オフィスのアイドルパイロッツ、七瀬留美。
アケーリアス文明のAIに見いだされ、先史文明の遺産である機動兵器エルラインを託された英雄として名高いが、アイドルオーディションの双璧であるアイドルアルティメットと銀河お嬢様アワードを総なめにしたランカーアイドルでもある。
強いドークトへの渇望
銀河連邦において、人々が弱いドークトを持つ者が殆どである事は大きな問題であった。
当時敵対していた星間国家ゾ・アウスはその住民の多くが「強いドークト」による超演算能力を以てして極めて正確な射撃や航宙機操縦を可能にしており、その力に銀河連邦宇宙軍UGSFは苦戦を強いられていた。
わずかに「強いドークト」を持つ地球人類……俗にニュータイプと呼ばれるパイロット達がその能力に対応する機動兵器を駆って対抗したが、数の上ではゾ・アウスに大きく差をつけられていたことには変わりはなかったのである。
銀河連邦の友好国、グラディウス帝国では少数民族リーク人が「強いドークト」(現地呼称リークパワー)を有しており、リーク人やグラディウス帝国出身人類とリーク人の混血児等はその力を有し、グラディウス帝国のクーディック・ランサー・アンド・シールズ社が生産するドークト稼働型航宙機ビックパイパーのパイロットとして宇宙規模災害勢力、バクテリアンの撃退に何度も成功していた。
ビックバイパーは通常の航宙機よりを大きく超える火力・機動力・防御力を有していたが、その稼働には「強いドークト」が不可欠であった為、銀河連邦としてはこのビックバイパーのポテンシャルには注目していたが「弱いドークト」を持つ者が殆どである銀河連邦としてはそれを運用する事は困難であった。
クーディック・ランサー・アンド・シールズ社が製造するビックバイパー。
そのポテンシャルは銀河連邦のGAIA兵器以上だったが、稼働には「強いドークト」が必要であった。
セレスティアとの交流と泉堂嶽顕の暗躍
銀河連邦の友好国として、古くから存在していた星間国家としてはセレスティアという存在があった。
セレスティアの人類は「強いドークト」を持つ者を多く輩出しており、そうした存在は神力船と呼ばれる宇宙戦艦を操縦する「聖女」となり、戦場に投入されていた。
しかし、セレスティアの「聖女」がもつ強いドークトは完璧とは言えず、セレスティア有史以前の技術を用いた儀式というブラックボックス化した行為で多くの人員が「聖女」にドークトを行使しエネルギーを送り込み、完璧なレベルにまで押し上げる必要があった上、その技術は厳重に秘匿されており、銀河連邦でもその技術を知る事は出来なかった。
時は遡り2970年代、セレスティアに赴任していた銀河連邦の外交官に泉堂嶽顕(タケアキ・センドウ)と言う人物がいた。
彼は人望もあり、セレスティアにおいて太いパイプを持ち、セレスティアにおいても尊敬を集めていた。
泉堂はしばしばセレスティア人の子供を連れて銀河連邦に帰国する事があった。
その理由は、そのセレスティア人の子供が持つ「強いドークト」が強すぎるが故、セレスティアの国教方針から強すぎるドークトを持つ子供は「存在無き者」と呼ばれ迫害される事案が度々あったからである。
泉堂はそうした子供を難民として銀河連邦に移民させていたが、これは銀河連邦が強いドークトを持つ人材を得る事に繋がり、結果としてドークトの研究に繋がる事もだが、そうした子供の子孫が強いドークトを持つ者になり、最終的には銀河連邦において「強いドークト」を持つ人間が増える事を意味した。
銀河連邦に保護された「存在無き者」は勢力の拡大を図る軍の派閥や巨大企業から狙われる事がしばしばあり、銀河連邦警察やUGSFの憲兵隊及び法務将校の悩みの種にもなった。
一方、泉堂はセレスティアで有力者に接近し「聖女」にドークトでエネルギーを送り込む儀式のメカニズムを遂に入手した。
泉堂は更に銀河連邦で積極的にドークト研究を行っていた太陽系管区に渡ると、当時、太陽系管区でドークト研究を行っていたアージュグループの人物達と極秘の研究を始め、遂には「弱いドークト」を持つ銀河連邦人に「強いドークト」を付与する力を手に入れることとなる。
「超覚醒会」と各勢力の思惑
2980年、泉堂は外交官の職を辞すると「あなたもドークトを手に入れよう」と言う謳い文句で宗教団体「超覚醒会」の代表となった。
泉堂は研究の結果手に入れた「強いドークト」を観衆の前で披露し、自分自身は人類に「強いドークト」を付与できると宣伝して回った。
最初は半信半疑だった銀河連邦市民や銀河連邦宇宙軍UGSFも、泉堂やそのバックボーンである研究者や大企業が発表する数々のエビデンスから泉堂が「強いドークト」を付与出来る事が事実であると確信するに至った。
彼の活動は銀河連邦内で大きな注目を集め、各企業や軍部が彼を取り込もうと躍起になった。
泉堂から「強いドークト」を持つ人材をより多く手に入れた勢力が銀河連邦で大きな発言力を持つ事になるからである。
その一方で「強いドークト」を持つ銀河連邦市民によるドークトを用いた犯罪やテロも増え、各勢力は泉堂を抱き込みたい一方で危険分子として排除したいと言う思惑も絡みあい
事態は複雑化していく。
その中で先手を打ったのは、超覚醒会の本部がある銀河連邦太陽系管区の地球連邦合衆国であった。
「強いドークト」を持つ者が優秀な人材になるメリットを得ると共に、彼らが犯罪やテロを行う事を未然に防ぐ為「強いドークト」を持つ者は国が「強いドークト」を持つ者が「それを狙う悪意ある諸勢力から保護する為」と言う名目で教育と登録を義務付けコントロールする事だった。
そして、地球においてドークトの研究を積極的に行っていたアージュグループはゼネラルグループやニューコムグループに先んじて地球連邦合衆国に働きかけ「強いドークト」を持つ者を教育・保護し、優秀な人材として育成する「学園都市」を地球・ジャブロー地区のジオフロントに建設・運営する事を提案し、アージュグループが主幹企業となり、傘下のアジョー重工とサカタ重工、マッケルインダストリーが学園都市の建設とインフラ維持を、ドークト能力の訓練と教育にはライプリヒ製薬が担当する形で学園都市アンバー・クラウンが程なくして建設された。
もともとアージュグループは傘下のアージュ・アビアシオンがティターンズに兵器を提供していた事もあり、アンバー・クラウンの防衛もティターンズが担う事となり、ここにアージュグループ内でも特に後ろ暗いとされる4社がティターンズと手を組んだことで彼らはプロジェクト4と市民からは揶揄される事になる。
2990年代に学園都市アンバー・クラウンが稼働を開始「強いドークト」を付与された人々の子弟が学園都市に「保護」されるようになると事態はさらに加速した。
地球連邦の治安部隊ティターンズはどこよりも早く「強いドークト」を持つ銀河連邦市民を破格の条件でスカウトするばかりか、半ば強引に誘拐する形で引き入れ、地球連邦合衆国内のみならず銀河連邦での発言力を高めた。
多くの「強いドークト」を持つ兵士を有する事になったティターンズは増長し、銀河連邦法に抵触する非人道的な人体実験や規制兵器の使用などをほしいままに行い、地球連邦合衆国との関係は悪化していった。
ティターンズの横暴は日を追うごとに悪化していったが銀河連邦は太陽系管区内での小さな事件と見做して特に介入はしていなかった。
その裏では敢えてティターンズの暴走を黙認し、ティターンズはもとよりティターンズに兵器供給をしている軍需企業からドークト研究データとそれに付帯するドークト運用兵器の独占的利用権を得ようとしていた存在が銀河連邦内に少なからずいた事も事実である。
太陽系管区も一枚岩ではなく、暴走するティターンズを牽制すべく非公然軍事組織エゥーゴやカラバが結成された。
彼らは銀河連邦宇宙軍UGSF太陽系管区の軍人もしくは地球連邦合衆国の軍人で構成されており、ニューコムグループ系列の企業アナハイムエレクトロニクスから支援を受けて活動を開始した。
こうして、ニューコムグループとアージュグループの代理戦争が地球で勃発する事となる。
ドークト実証部隊の設立
2995年初頭「強いドークト」を持つ者が太陽系管区で増え、それによるテロや犯罪が増える中、二つの問題が発生していた。
それは通常の警察力や軍事力では「強いドークト」を持つ者に対抗しえないと言う事。
もう一つは「強いドークト」を持つ者への強い嫌悪感が銀河連邦市民の間で蔓延しヘイトクライムが発生していたと言う事である。
太陽系管区は銀河連邦が一連の「強いドークト」の問題を放置し続ける事にしびれをきらし、この問題に対処するべく幾つかの施策を打つ事となる。
一つは、銀河連邦警察太陽系管区警備部に「強いドークト」を持つ者で構成される刑事組織「AMP」を結成、ドークトによる犯罪やテロへの対抗を図る事だった。
隊員の一人、香津美・リキュールは「強いドークト」を持つ者でも更に頭一つ秀でた能力を持ち、様々な事件の解決に貢献した。
もう一つはUGSF太陽系管区にドークト戦闘実証部隊を配備する事だった。
当初は太陽系管区の地球連邦合衆国の地球連邦軍に配備する事も考慮されたが、ティターンズの暴走を止めるには地球連邦合衆国よりも、それを統括する銀河連邦の宇宙軍、UGSFに配備する事で 立場上の有意さを得る事が必要とされたからである。
UGSF太陽系管区のドークト実証部隊は2つ存在した。
一つは戦闘任務に特化した大空魔竜隊、もう一つは対テロ及びレスキュー任務に特化したGURPSである。
特にGURPSは対テロ、戦闘任務以外にレスキュー任務も担い、これをもって「強いドークト」を持つ者への嫌悪感を払拭するデモンストレーションと言う意味合いも持っていた。
GURPSのメンバーは以下の通りである。
石動剛次(ゴウジ=イズルギ)司令官、島内梨華(リカ=シマウチ)隊長、楊紅龍(ヤン=ホンロン)、梶浦吉樹(ヨシキ=カジウラ)、更にデモンストレーション戦略として民間軍事会社美城プロダクションから出向してきたドークト保持者、堀裕子(ホリ=ユッコ)、依田芳乃(ヨシノ=ヨリタ)、白坂小梅(コウメ=シラサカ)、本田未央(ホンダ=ミオ)である。
堀裕子はUGSF特殊部隊隊員ホリ=タイゾウの親戚にあたり、不安定ながらも「強いドークト」を持っており、また別紙のエピソード「民間軍事会社の勃興」で記された通りアイドルパイロッツとしても実績があった事からなるべくしてなった人選であった。
彼らの乗機は以下の通りである。
ゴウジ=イズルギ:パーソナルトルーパー・R-GUN、リカ=シマウチ:パーソナルトルーパー・R-3、ヤン=ホンロン:パーソナルトルーパー・R-2、ヨシキ=カジウラ:パーソナルトルーパー・R-1
尚、これらパーソナルトルーパーの開発には親ニューコム派の学者やエンジニアが多数携わっており、彼らがアージュグループ、そしてアージュグループと結託したティターンズへの抑止力としての意味合いを持っている事が伺える。
また、連邦議会のGAIA承認が決議された時に限り、これらパーソナルトルーパーは合体し、SRXという大型機動兵器になり、極めて高い戦闘力を発揮する事となる。
当然、SRXはGAIA兵器として見做されるが合体しない限りはGAIA兵器としては見做されない。
そして、ホリ=ユッコとミオ=ホンダはUGSFが極秘に開発したドークト戦用戦闘機ソルバルウに、ヨシノ=ヨリタはゼオダレイに、コウメ=シラサカはソルグラウドに乗り込む事となる。
ソルバルウも同様にソルバルウ、ゼオダレイ、ソルグラウドが合体する事でGAIA兵器・ガンプミッションとなるが、合体していない状態ではGAIA兵器とは見做されなかった。
月島瑠璃子の悲劇
2990年代中盤「強いドークト」を持つ者が多く生まれるようになった太陽系管区であったが「強いドークト」を付与する能力を持つ者は泉堂嶽顕しかいなかったと言われている。
しかし、例外が存在した。
それが月島瑠璃子という「強いドークト」を保持する少女である。
2978年に太陽系管区、地球の日本エリアで出生した彼女であったが彼女の境遇は悲惨であった。
父親は大病院の院長であり、恵まれた家であったが、父親は過度の性依存症であり、毎晩のように自宅に愛人を大勢集め、おぞましい宴を開いていた。
そして彼女は唯一の心のよりどころであった兄、月島拓也と共にその光景を眺め、ただ恐怖するしかなかった。
月島拓也は温厚な性格であり、怯える瑠璃子をいつも抱きしめ続けていた。
そしてその日は訪れた。
月島拓也は愛する妹、月島瑠璃子と一線を越えてしまったのである。
それがトリガーとなり、月島瑠璃子は「強いドークト」を付与する能力を発動、月島拓也は「強いドークト」を手に入れてしまったのである。
それから月島拓也は「強いドークト」を使い、強いエレクトロキネシスやテレパスによる犯罪に手を染めるようになって行った。
月島瑠璃子は心を痛め、愛する兄を止められる存在を探し続け、ドークトの才能を持つ者を探す為、毎日高校の屋上からテレパスで「強いドークト」を付与するに足りる人物を探す事を決意する。
「清水ヶ丘高校生徒連続発狂事件」
2995年、ある日の授業中、月島兄妹が通う清水ヶ丘高校で生徒が次々と錯乱状態になり、支離滅裂な言動の末、自傷行為に至った。
首謀者は言わずとも、月島拓也であった。
月島瑠璃子は遂に、兄・月島拓也を止める決意をした。
彼女は同級生である長瀬雄介と知り合ってから先、交流を深めており、彼であれば兄の暴走を止められると確信するに至った。
長瀬雄介に「強いドークト」を付与し、実の兄である月島拓也と対峙させる。
それは愛する兄を傷つける事を意味したがこれ以上、兄が暴走し罪を重ねる事には耐えられなかったのである。
「事件」の発生当時、子供たちが一斉に発狂し、更にそれには「強いドークト」が用いられたと言う事から、AMPは調査を開始した。
それと同時にGURPSがプロジェクト4やティターンズがこの「強いドークト」を持つ者を誘拐・略取する事を阻止する為に出動し、制空権を維持する事となる。
AMPは二日間の調査の結果、清水ヶ丘高校近辺に二人の「強いドークト」を持つ者の反応を感知した。
特に、それぞれは夜の清水ヶ丘高校の校内で確認されている事から、夜をまって清水ヶ丘高校に突入する事を決定する。
これに対してプロジェクト4やティターンズが介入するのを阻止する為、引き続きGURPSは清水ヶ丘高校上空の制空権維持を担当する。
そして、案の定プロジェクト4を構成するアジョー重工傘下の民間軍事会社プロダクションミノスのパイロット、ハイドラ―とバスターが襲来する。
アジョー重工は裏でデストロンと結託しており「強いドークト」で稼働するトランステクターを手に入れていた為、ハイドラ―とバスターはトランステクター「ダークウィングス」に搭乗し学校を襲撃、現場を抑えようとするもGURPSのパーソナルトルーパー、ホリ=ユッコのソルバルウ、そしてかけつけたサイバトロンのゴッドマスター、ジンライによって撃退される。
現場の安全が確保されたところでAMPは清水ヶ丘高校に突入するが、そこで彼女らが見たのは異様な光景であった。
大勢の生徒が全裸の学校内で倒れており、更に生徒会室では二人の「強いドークト」を持つ者が対峙していた。
二人の「強いドークト」を持つ者、それは片や月島拓也、そしても一人は長瀬雄介だった。
二人が同時にドークトをぶつけ合わせた瞬間、辺りは白い光につつまれた。
雄介は拓也の精神に入り込み、彼が幼少期に経験したおぞましい体験の記憶を消し去ることで事態を収束させた。
しかし、その代償として月島拓也、月島瑠璃子は意識不明の状態に陥ったのである。
結果、月島瑠璃子・月島拓也両名はUGSF所轄の病院に収容、危険分子からの誘拐を阻止する為に24時間体制の警護を受ける事となる。
そして長瀬雄介は、月島瑠璃子の身柄がティターンズやプロジェクト4から「強いドークト」を持つ者として狙われていると言う事を知り、彼女を守りたいと言う思いからGURPSへの加入を求める。
GURPSのイズルギ司令はそれを認め、彼にはドークト戦対応パーソナルトルーパー・ヒュッケバインを与え、訓練する事となった。
巳真兎季子の物語
こうした中、地球の日本エリア猯尾谷(まみおだに)に一人の少女が居た。
名前は巳真兎季子(トキコ=ミマ)、相性は「キィ」彼女は感情の起伏が乏しい事以外は普通の少女であったが、実際は「強いドークト」を持つ者であった。
巳真家は代々「強いドークト」を持つ数少ない家系であったが「強いドークト」を持つ人物が狙われるようになってからは彼女の身をどう守るか、保護者であった祖父、巳真武羅尾(ムラオ=ミマ)は悩みを募らせていた。
武羅尾は元々ドークトについての研究者であった事から、セレスティアでは強いドークトの付与に際して、大勢の人間が対象にドークトを注ぎ込むと言う手法を取っていた事を逆手にとって、巳真兎季子を「弱いドークト」の保持者にダウングレードさせると共に感情を封印、再び大勢の人間が巳真兎季子に感情=ドークトを注ぎ込んだ時に「強いドークト」と感情を取り戻すようにする事で彼女を目立たない存在にし、不穏分子から守ろうとした。
しかし、いつか彼女は自分の意思で行動し、感情を取り戻す必要があった。
そこで巳真武羅尾はカバーストーリーとして巳真兎季子に
「お前はロボットでありその命はあと数年である。それまでに3万人の友達を作れば人間になり生き残れる」
と遺言を残した。
3万人の友達を作ると言う事は、3万人の人間から感情を注ぎ込まれる=大勢の人間からドークトを注ぎ込まれる、と言う状況を意味する。
こうして巳真武羅尾は巳真兎季子が「強いドークト」の保持者ではないように擬態したが、時は既に遅かった。
巳真武羅尾はドークトの研究者だったが、かつて袂を分かった存在にプロジェクト4の筆頭格であるアジョー重工の蛙杖仁策が居た。
彼は巳真兎季子が「強いドークト」を持つ家系の人物である事に感づいており、その身柄を欲し、アジョー重工傘下の民間軍事会社プロダクションミノスであるとともにデストロンのゴッドマスター、バスターとハイドラ―に猯尾谷の襲撃を命令、巳真兎季子の身柄を奪取しようとした。
しかし、バスターとハイドラ―が行動を起こした事はすぐサイバトロンの知る事になり、サイバトロンの司令官、スターコンボイ、そしてゴッドマスター、ジンライ達によって阻止される事となる。
後を追って、GURPSが到着、巳真兎季子の身柄を保護した。
その後、何故デストロンが彼女の誘拐を企図したのか調査が行われた。
そして彼女の身体には「強いドークト」と感情を封印するプロテクトがかけられており、それを解くには3万人規模の人間から感情=ドークトを注ぎ込まれる事が必要である事が判った。
GURPSの研究者たちはどうすれば彼女に対して3万人規模の人間達から感情を注ぎ込まれるシナリオを構築できるか苦慮したが、美城プロダクションからGURPSに出向していたユッコがある提案をする。
それは巳真兎季子をアイドルにするとアイデアだった。
美城プロダクションのアイドルパイロッツにすれば、巳真兎季子がトップアイドルになった時3万人規模の人間から感情を注ぎ込まれる事は確実である。
こうした案を踏まえ、GURPSの石動剛次司令は美城プロダクションの美城常務に、巳真兎季子を美城プロダクションのアイドルパイロッツにする事を打診、但し身柄はGURPSの預かりにして彼女の身柄はGURPSが守ると言う契約を取り付けた。
巳真兎季子は「強いドークト」を失っていたが、完全とは言えず、かなりのドークト能力があった為、彼女にもドークト戦用戦闘機ソルバルウが与えられ、アイドルパイロッツとしての訓練の日々が続く事となった。
感情に乏しい巳真兎季子はアイドルとして歌う事はあれど、決して笑う事がなかった。
ある時、音楽番組に出演した彼女は司会から「君、全く笑った事がないそうだけど、どうしてなの?」と問われると、彼女は一言こう答えた「何故だかわからない」と。
感情の乏しさが大きな足かせとなっていた彼女ではあったが、同じドークトを持つアイドルとしてミオ=ホンダとホリ=ユッコはいつも彼女に対して友好的に接した。
やがて、三人の距離感も縮み、アイドルパイロッツとしての活動は順調に進んでいく事となる。
月島兄妹の誘拐・そして奪還
月島拓也、月島瑠璃子が病院に保護されて一カ月後、事件は起きた。
ティターンズのモビルスーツ師団とアジョー重工傘下の民間軍事会社プロダクションミノスのバスターとハイドラ―、そして桜井夢子(ユメコ=サクライ)が病院を襲撃、GURPSの不意を突き、月島拓也、月島瑠璃子両名を誘拐し離脱したのである。
これは大きな痛手であった。
仮にティターンズの手で二人が意識を取り戻し、なんらかの形でティターンズの軍事行為に参画する事となると月島拓也の持つ、広い範囲の人間を発狂させるドークト能力も、月島瑠璃子が持つ「強いドークトを付与する能力」どちらも大きな脅威となるからである。
長瀬雄介は直ちに二人の救出を主張したが、問題は二人がどこに連れ去られたかと言う問題であった。
更に、桜井夢子が駆っていた航宙機はあの「ビックバイパー」だった。
それは彼女が「強いドークト」の保持者である可能性が高いという事である。
そんな時に、GURPS本部に一人の少女が訪れた。
彼女は学園都市アンバー・クラウンの治安担当者、白井黒子(クロコ=シライ)と名乗り、アンバー・クラウンで奇妙な出来事が起きていると告げた。
アンバー・クラウンには「強いドークト」を持つ者が集められていたが、近年、ドークトを持たない子供達が次々と入学してくるのだという。
そしてアンバー・クラウンはドークト能力の養成校であることからドークトを持たない子供達は行き場所を失い、同ジオフロントのスラム街へと追いやられていくがそのスラム街から子供達が次々と消えていく、という事案が続いていると言うのである。
また、アンバー・クラウン運営の主幹企業であるアージュグループがドークト研究の協力者を求め、アンバー・クラウン内の生徒達をスカウトしているが、スカウトされた子供達はアージュグループの研究棟があるアンバー・クラウンB5地区に連れていかれたまま、音信不通になっていると言うのである。
イズルギ司令はある仮説を立てた。
先の月島兄妹の誘拐事件では、桜井夢子は航宙機ビックバイパーに乗っていた。
しかしビックバイパーは「強いドークト」を持たないと操縦できない。
強いドークトに変わるエネルギー源は何かを考慮すると、先のスーパーメガトロン襲来時、人間をエネルゴンキューブの材料にしてそれをキャパシタ内に格納し使う事である。
もしもプロダクションミノスの母体であるアジョー重工がデストロンのスーパーメガトロンと結託し人間をエネルゴンキューブの材料にする技術を得ていればそれは容易である。
しかし、どうやって材料となる人間を集めるか、それは自身が運営の主幹企業となっている学園都市アンバー・クラウンに人を集める事である。
つまりアジョー重工、ひいてはプロジェクト4とティターンズはアンバー・クラウンの研究棟でドークトを持たない子供達をエネルゴンキューブの材料にし、ドークト兵器の運用に用いる実験をしていると言う事、更には「強いドークト」を持つ子供達に違法な人体実験を行い、ドークト運用技術とそれに付帯する兵器開発を行っているのではないだろうか。
もし、強いドークトを持つ者を誘拐して連れて行く先としてはアンバー・クラウンの研究棟である可能性は大いにある。
イズルギ指令はティターンズに抵抗活動をしていたエゥーゴのブライト=ノアと秘密裏に連絡を取り合い、アンバー・クラウン解放作戦を立案する。
こうして、UGSF地球管区の戦力、そしてエゥーゴ、カラバ、UGSF地球管区の民間軍事会社である矢島オフィスと765プロダクション、876プロダクション、961プロダクション、315プロダクション、東豪寺警備保障はアンバー・クラウンへの突入作戦を敢行する。
また、実験棟で行われているであろうプロジェクト4による犯罪行為摘発の為に銀河連邦警察警備部特車二課、銀河連邦警察刑事部が更に参画する事となり、この作戦はアージュグループの連邦法違反の人体実験とそれに付帯する兵器の密造摘発と言う名目で銀河連邦警察刑事部の銭形警部が指揮する事となった。
集結したUGSF及び民間軍事会社、エゥーゴ、カラバはアンバー・クラウン上空でプロダクション・ミノス及びティターンズと大空中戦を繰り広げた。
この時、プロダクション・ミノスは人間のドークトを絞り出して生成したエネルゴンキューブをキャパシタに格納したビックバイパーを多数展開し、UGSF及び民間軍事会社、エゥーゴ、カラバは苦戦を強いられた。
しかし、ここで多くのビックバイパーに不自然な挙動が見られた。
ある特定のビックバイパーを撃墜すると、それと同時に10機程度のビックバイパーが機能不全を起こして墜落していくのである。
ホリ=ユッコはドークトで戦場の全てのビックバイパーを精査すると次の事が判った。
実際に人が乗っているビックバイパーは1/10であり、他のビックバイパーには人が乗っていない。
これは後の銀河連邦警察による捜査で判明したが、アジョー重工はサイプシステムと呼ばれる遠隔操作アンドロイドの製造に成功していたのである。
それは人間のドークトを材料にして生成したエネルゴンキューブをキャパシタにして装填したアンドロイドを人間の「弱いドークト」で遠隔操作し、アンドロイド・サイプには「強いドークトを持つ者」として振舞わせる事が出来るという技術による物であった。
ビックバイパーには親機と子機があると言う事は判った。
問題はどうやって親機を特定するかである。
GURPSと大空魔竜隊はドークトを以てしてビックバイパーの親機を探しだし、特定した。
こうして20の親機を特定した彼らはそれらを優先して攻撃した。
そんな時、事件は起きた。
315プロダクションの秋月涼少尉(リョウ=アキヅキ)が親機のビックバイパーをロックオンした際、SIFコードにはプロダクション・ミノス:ユメコ=サクライ(桜井夢子)と表示された。
夢子は涼と恋仲の関係であったが、ある時期を境に夢子は消息を絶っていた。
それは、プロダクション・ミノスに彼女が移籍し、ドークト兵器の運用に携わっていたからであった。
夢子は満身創痍であった。
サイプシステムで遠隔操作を行うには人体に多大な負荷がかかるからである。
秋月涼は夢子に投降を呼びかけるが、夢子はもはや応答する力も無くなっていた。
秋月涼は強硬手段に出る。
自身の乗るジオキャリバーが搭載するトラクタービームで夢子のビックバイパーを捕捉・固定すると夢子のビックバイパーに飛び移り、外部イジェクトスイッチをオンにして、夢子を強引にコクピットから取り出すと、彼女を抱きかかえてパラシュートで降下したのである。
そしてそれが最後のビックバイパーの親機であった。
学園都市アンバー・クラウンと外界の間には迎撃システム、アトモスリングがあった。
これはアンバー・クラウンに入るトンネルを360度取り囲む巨大な城壁であり、極めて強固なシールドと長射程ビーム砲をオールレンジで斉射するシステムである。
矢島オフィスはこの存在への対処を事前に考慮しており、地上戦高火力投射部隊を編成していた。
学生インターンの西住みほ(ミホ=ニシズミ)を中核としたこの部隊は超大型戦車型モビルスーツ「G・コマンダー」で編成されており、搭載されているメガ粒子砲は戦艦の荷電粒子砲と同等の火力を投射出来た。
みほの「ヒューズ確認!」という声と共にあんこうチーム、かめさんチーム、アヒルさんチーム、カバさんチーム、うさぎさんチーム、カモさんチーム、レオポンさんチーム、アリクイさんチーム、サメさんチームのG・コマンダーは一斉にメガ粒子砲の発射準備に入る。
「諸元入力、同時弾着射撃、発射!」
G・コマンダーはアトモスリングの一点に向かってメガ粒子砲を発射する。
シールドは打ち破られ、城壁には穴が開いた。
G・コマンダーの部隊を率いた西住みほ。
彼女もまた篠塚弥生にスカウトされた学生インターンだったが彼女たちは戦車の操縦適性が高かった事から陸戦特化のG・コマンダーを用いた任務にあてられた。
銭形警部の号令と共に連邦警察警備部特車二課のレイバー隊がアンバー・クラウンに突入する。
更に、その後ろに連邦警察機動隊と捜査員が続く。
UGSF、カラバ、エゥーゴ、そして各民間軍事会社の戦力もアンバー・クラウンのジオフロントへ突入していった。
アジョー重工の命令でジオフロントでは灯火管制が引かれていたが、白井黒子の友人であり、同じようにアンバー・クラウンでの不穏な出来事を調査し、レジスタンスをひそかに結成していた御坂美琴とその仲間たちの手で灯火管制は解除され、街には灯りがともった。
アンバー・クラウン内の学園放送部は状況を実況中継していた。
実況中継が流れる中、アンバー・クラウン内の地上戦力を駆逐していくレイバー隊やあんこうチーム、そして捜査員や機動隊はアンバー・クラウンの研究棟にたどり着く。
銭形警部から通信が入る。
「こちら連邦警察、アンバー・クラウン内の研究棟を制圧した!」
アンバー・クラウン内の子供達やUGSF、民間軍事会社、エゥーゴ、カラバのメンバーらが歓声を上げる。
しかし、そこに月島拓也、そしてアジョー重工の社長の姿は無かった。
その一方で月島瑠璃子は奇跡的に救出され、長瀬雄介は安堵することとなる。
オペレーション・ムーンゲート
アンバー・クラウン内の戦闘が終わり、ティターンズの地上戦力はほぼ壊滅し、プロダクション・ミノスも戦力の多くを失った。
連邦警察はこれまでの捜査内容からティターンズの司令官ジャミトフ=ハイマン、そしてアジョー重工の社長にしてプロジェクト4の筆頭格である蛙杖仁策(ジンサク=アジョー)に
出頭命令を出したが、ティターンズもプロダクション・ミノスもこれを無視し、逆にその戦力を月に集結させた。
それと同時にサイバー攻撃を開始し、銀河連邦太陽系管区の防衛システム、ソーラ・レイのルート権限を奪取、月にある大企業DN社が所有する民間軍事会社DNAプロダクションが所有する機動兵器バーチャロイドのルート権限も奪取、更には月で近年発見された古代アケーリアス文明の長距離砲撃システム「太陽砲」のルート権限をも奪取し、徹底抗戦の構えを見せた。
矢島オフィスの篠塚弥生は各恒星系管区に存在が許される民間軍事会社の数には連邦法で制限が課されている事を承知の上でゼネラルグループ内の各民間軍事会社に応援を要請した。
ティターンズとプロジェクト4を腫物扱いしていたUGSFは篠塚弥生を召喚し詰問したが、逆に篠塚弥生はこれまでのデストロンとプロジェクト4、ティターンズの横暴を放置していた銀河連邦にこそ非があるとUGSF高官らを糾弾した。
UGSF地球管区の司令官、アレクセイ=マイヤー中将もまた「諸君らの茶番には愛想が尽きた」といって独自の行動を取る事を宣言。
UGSF地球管区第二艦隊旗艦ヤマトに連絡を取り、ヤマトの波動砲によるソーラ・レイ破壊を命令した。
一方、月のDN社は大混乱に陥っていた。
主戦力である月面のバーチャロイドが機能不全となり、ティターンズの排除が困難となった今、間違いなく戦後に責任を追及されるのは明らかだった。
しかし、地球には地上軍が存在しており、これを月へリバース・コンバートで転送すれば月への戦力投入は可能ではある物の戦力数が足りず、作戦の遂行は困難である事には変わりはなかった。
そこでDNAプロダクションは今ある地上軍に加え、地上のバーチャロイド生産施設をフル稼働させ、バーチャロイドを大量生産、パイロットについては過去に矢島オフィスが取った「エレクトロスフィア内でのゲームを現実世界での行動にフィードバックさせるシステム」を取り、ゲームに擬態したバーチャロイド操縦ゲーム「バーチャロン」を配信し、パイロット適性の高いユーザーを選び出し、彼らにバーチャロイドを遠隔操縦させ戦力とすると言う荒唐無稽ともいえる賭けに出た。
後にこのDNAプロダクションの作戦はオペレーション・ムーンゲートと呼ばれる事となる。
一方で矢島オフィスもアケーリアス文明の大量破壊兵器が乱用される事態は宇宙規模災害であると解釈し、宇宙規模災害対策チームである矢島オフィス第6軍のAI、ユーリィ=キューブに判断を仰いだ。
ユーリィはこれを宇宙規模災害と解釈する事を容認、宇宙規模災害にのみ運用が許される機動兵器エルラインの使用を解禁し、エルラインとそのパイロット七瀬留美は矢島オフィスの全戦力を率いて月へと向かった。
月での戦闘は熾烈を極めた。
UGSF、エゥーゴ、各民間軍事会社が一斉にティターンズとプロジェクト4の戦力とぶつかり合った。
一方、ティターンズはその身柄を奪取していた月島拓也を洗脳し、ドークト戦用大型モビルスーツ、サイコ・ガンダムを投入し逆転を図った。
極めて攻撃的な人格に洗脳された月島拓也の前に、ヒュッケバインを駆る長瀬雄介は立ちふさがる。
因縁の二人の対決は長瀬雄介の勝利であった。
月島拓也はベイルアウトすると、サイコ・ガンダムに搭載されていた人格コントロールシステムの呪縛から解放され、ついに正気を取り戻す事となる。
そして戦力が大幅に減退していたプロジェクト4もティターンズもなすすべなく、壊滅状態に陥った。
追い詰められた蛙杖仁策は残された全てのビックバイパーをサイプシステムで起動させようとし、自らビックバイパーの親機に乗り込み、サイプシステムと連携を試みたが許容量を超えたサイプシステムの起動は叶わずシステムが暴走、親機は爆発し蛙杖仁策は死亡した。
やがて矢島オフィス第6軍とDN社のバーチャロイド部隊は太陽砲に到達、太陽砲の破壊に成功し、ジャミトフ=ハイマンは自殺。
デストロンのリーダー、スーパーメガトロンもデストロンの兵力を従えて太陽系を離脱。
こうして長きにわたったドークト・ウォーは終戦を迎えた。
ドークト・ウォーの終結
2998年、長きに渡ったドークト・ウォーは終結を迎えた。
銀河連邦は、「強いドークト」を持つ者たちの教育や保護を見直し、彼らが社会に貢献できる体制を整えた。
アイドルパイロッツたちも引き続き活躍し、人々に希望と夢を与え続けた。
新たな時代の幕開けに、人々は未来への期待を胸に歩み始めたのである。
そんな中、カメラを前にして笑顔で答えるアイドルパイロッツがいた。
巳真兎季子である。
彼女はこのドークト・ウォー終結後、ホリ=ユッコと共にアイドル活動に専念し、遂にはアイドル界最高峰のオーディションと言われるアイドル・アルティメットで首位に輝いたのである。
その時、3万人を超える人々からの感情が彼女に流れ込み、彼女は呪縛から解放され、感情を取り戻した。
これこそが30000人の友達計画であった。
格納庫前で宣材写真を取る巳真兎季子。
彼女が笑顔を取り戻すための計画は入念に行われた。
巳真兎季子をトップアイドルにし、30000人以上の友達から感情を受け止め、笑顔を取り戻すための計画。
それは秘密裏に行う必要があったからである。
Special Thanks:S.Aikawa, きょび, なつゆき, ちゃーりぃ